NotenkiExpress 2013

お天気,競馬,2時間サスペンスドラマなどに関するメモ書きです。

DQNサーファー落雷事故

今年は水による事故が多いような気がしますが,例年,7月下旬から8月上旬にかけては落雷による人身事故が多い時期です。夏休みにはいってちょうどお出かけごろ……ということもあるでしょうが,お天気サイドから見ると,この時期は太平洋高気圧の勢力が一時的に弱まり,上空に寒気がはいって大気が不安定になりやすい,ということができます。ただしこれはあくまでスローガン的なもので,もちろん年によって違います。

この時期の落雷死亡事故をざっと見てみましょう。すべてを網羅しているわけではありません。そんな根気はないし,興味も関心もありません。

1955/08/03 長野県伊那富士見台でキャンプ中の中学生4人
1967/08/01 西穂高岳の登山パーティーの11人
1971/08/08 朝日連峰で高校生を引率中の教師1人
1973/08/05 長野県の校庭や水田などで3人
1973/08/06 日光のゴルフ場で2人
1974/08/02 大阪のゴルフ場で3人
1975/08/06 三重県のゴルフ場で2人
1987/08/05 高知でサーファー6人
1991/07/27 宮城県のゴルフ場で1人
1998/08/12 愛知県のゴルフ場で1人
2001/08/04 岡山県のゴルフ場で1人

これを見ると,昔は登山中の事故が多かったのに対し,最近はスポーツ中(とくにゴルフ)の事故が多いように見えますが,一般的な傾向なのかどうかはわかりません。

一般に,落雷事故は人災的な面が大きい場合が多いです。その中でも起こるべくして起こったとしかいいようのないのが,1987年8月5日に高知の生見海岸で起こったサーファーの死亡事故です。

この日,日本海に前線を伴った低気圧があり,前線がゆっくりと南下,その前線に向かって暖かい湿った空気が流れ込んでいました。一方,上空には寒気がはいってきており,上層に寒気,下層に暖湿気流という,大気の不安定の典型的な(というより入門的な)パターンになっていました。このため高知地方気象台は,01時20分に雷雨注意報(今の雷注意報に相当)を発表していました。

ちなみに,内陸部の雷は午後から夜にかけて発生することが多いですが,海岸部では夜間から早朝にかけて発生することがよくあります。これは内陸部の冷えた空気が陸風によって海面上の比較的暖かい空気の下にもぐりこんで持ち上げるから,と考えられています。

さて,5日早朝,生見海岸では激しい雨にもかかわらず,約50~60人がサーフィンをしていました。しかし,雷鳴が聞こえたため20人は岸に上がり,残りは2つのグループに分かれてなおもサーフィンを続けていました。06時45分ごろ,このうちのひとつのグループに落雷,20人ほどが気を失って海に浮かびました。付近の民宿の人や無事だったサーファーらが救助しましたが,6人が死亡,2人が重体,5人が重軽傷を負いました。このとき雷の直撃を受けたのは1人で,あとは海水を伝わる電流に感電したようです。事故の直後,現場の海は不気味に赤茶けて泡立っていました。(以上,高知新聞による)

頭の上で雷が鳴っているのにサーフィンを続けるなどという行為が自殺(未遂)行為以外の何ものでもないことは,少なくともこのときサーフィンを続けていた連中以外には稲光を見るより明らかでしょう。

ところが,なんだかよくわかりませんが,「海には雷は落ちない」という伝説があったそうです。実際,それまではサーフィン中の重大な落雷事故はなかったようです。しかし,裏を返せば雷が落ちるような危険な状況でサーフィンをするようなDQNはそれまではほとんどいなかったといったところなのでしょう。かりに海に雷が落ちなくても,人や船には落ちます。

一般論でいえば,事故がないからといって安全だとは必ずしもいえません。安全でないからといって事故が起こるとは限らないからです。

産業災害では,「ハインリッヒの法則」とよばれる有名な経験則があります。

1件の重大災害の陰には29件のかすり傷程度の軽い災害があり,さらにその陰には300件のケガはないもののヒヤッとした体験がある。

そのままあてはまるかどうかは別として,こういった無謀事故を考えるときの参考にはなるでしょう。

ちなみに,この朝,生見海岸に近い東洋町の甲浦漁協では,大雨と激しい雷雨のために出漁を取りやめたそうです。「午前四時ごろから生見の沖台方面に出漁するのだが,今年一番の激しい雷雨が休漁させた」(高知新聞)

シツコイようですが,こんな中でサーフィンを続けるなんてのは狂気の沙汰です。こんなDQNが引き起こした事故の処理に税金が使われるのは納得できません。かかった費用は本人か遺族に請求すべきです。