NotenkiExpress 2013

お天気,競馬,2時間サスペンスドラマなどに関するメモ書きです。

東京の2月の大雪

この冬はまだ東京で降雪が観測されていません。このまま観測されないとすれば,1876年の観測開始以来はじめてのことになります。

さて,統計上,東京で雪が降ることがもっとも多い月は2月です。また,2月には最深積雪が10cm以上の日数が0.4日あります。ということは,平均すると2~3年に1日は10cm以上積もる日があるということです。そして10年に1日は20cm以上積もることがあります。

また,気象庁天気相談所作成の資料によると,東京の月最深積雪の1位から4位までは2月に記録されています。

ということで,東京の大雪について歴代1位から3位までを見てみましょう。

●東京の最深積雪1883年2月8日

東京でもっとも雪が積もったのは1883年2月8日のことです。このときの積雪は46cmと記録されています。

1883年2月9日付の東京日日新聞によると,7日の02時ごろからみぞれが降り出し,05時ごろから雪になりましたが,そのころはまだ「降るより先に早く解たれば」ほとんど積もりませんでした。ところが,夕方から冷たい北風が吹き出し,「泥道の氷の上に降積りて夜半許には一尺の上に満たるが此頃より風が益ゝ荒く雪が彌ゝ降頻りて……」という状況になりました。そして翌日は一面の銀世界。

戸外に出れば扠も降積みにけり。軒下の雪除ある所にても三尺に近く満たれば況て往来の風の吹溜る所(?)にては五尺より六尺にも及びたらんか

ちなみに,大坂(当時)でも「実に二十年以来の大雪」だったようで,12日付の東京日日新聞によると,7日午後6時から降りはじめ,8日午前6時には「大坂市中の積雪一尺一寸余」積もったようです。

“尺”とか“寸”とかいった単位に時代を感じます(笑)

●1945年2月22日

東京の歴代2位の積雪は,1945年2月22日に記録した38cmとなっています。しかし敗戦が決定的になっていた時期だけに,新聞には記事が一切ありません。翌23日付の朝日新聞の第1面(といっても第2面までしかありませんが)には「神風特攻隊第二御楯隊二空母を撃沈す」「空地呼應硫黄島の敵に痛撃」などの空しい(空々しいともいう)見出しが見えます。

27日付の朝日新聞には「夜通し除雪作業」という見出しが見えますが,東京の雪とは関係がなさそうです。同じ紙面には「盲爆の罹災者へ急ぐ…」(…の部分は判読不能)という見出しが見え,空爆大好きなアメリカによる非戦闘員に対する大量殺戮が本格化していたことがわかります。東京大空襲はおよそ10日後です。

●1936年2月

東京の歴代3位は,1936年2月23日に記録した36cmとなっています。

実は同じ月の4日に31.5cmの積雪があり,「四十九年来の暴風雪」「悽愴,雷電を加へて狂乱」「全市の動脈停止す」「白魔の蹂躙・帝都を闇に化す」などと新聞に書かれていました。

この大雪がいい教訓になったのか,新聞で見るかぎり,23日のほうが積雪が多かったにもかかわらず,混乱は少なかったようです。新聞には「徹夜で護るレール」「東鐵は熱湯戦術」「市電でも終夜運轉」などの見出しがあります。

4日のときにはホテル替わりになってしまった各劇場も,いい教訓――というより懲りたのか,さっさと閉場時間を切り上げてしまったようです。

なお,この23日の雪は気温が上がらなかったために26日まで残り,二・二六事件で反乱軍が踏みしめた雪になっています。一部の歴史書にある「25日の夜半から東京は30年ぶりという大雪が降りはじめた……」などという記述は真っ赤なウソです。東京では24日から26日の朝まで降雪は観測されていません。